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ガイヤック赤

フランスの南西地方=シュッド・ウエストといえば、ワインはそれほど有名ではないかもしれませんが、美食の地として知られています。フォアグラ、バスクの豚で作った生ハム、鴨のコンフィ、プルーンなどなど、食指が動くものがたくさんあります。面白いことに、この地方にはとてもたくさんのブドウ品種が存在していてコフレ(玉手箱)のようだ、と言われています。ここにしか存在しない土着品種に興味のある方は、是非覗いてみていただきたい世界です。

 

今秋プロ向けに開催された「ヴィネクスポ・ニッポン」で行われたセミナー「セパージュのコフレ(玉手箱)」<講師:石田博氏/ワイナリーレポート:西田恵氏>のレポートです。「白編」もあります。南西地方の概要は、こちらもご参考に。

石田氏

的確なコメントをわかりやすく説明してくれる石田博氏。

 

<ネグレット>

南西地方のちょうど中央部でトゥールーズの北に位置するフロントンにしか存在しないブドウ品種

石田氏曰く「バリエーション豊かな赤になる品種で、フルーツや動物的な香りが率直にあがってくるアロマティックなワインから、土っぽさが出てくる上級品まであり、食感がなめらかなのが共通項。汎用性があるワインになる」というのが特徴です。

「シャトー・クティネル2012<ヴィニョーブル・アルボ>」は、ネグレット主体でガメイ、シラー、マルベックのブレンド。なめし革や野性的な香りに加えて、チェリーやラズベリーなどの果実がふわりと立ちのぼるニュアンスで、なめらかで、酸もタンニンも中程度。この野性的な動物的な点が個性なのかもしれません。

 

<マルベック>

南西地方の北部に位置するカオールの主要品種です。最近アルゼンチンのマルベックの認知度が上がってきています。

石田氏が「タナ以外の南西地方の黒ブドウは、色と濃縮感があり、酸はしっかりしているけれどタンニンは低い、という点が共通している」という通り、このマルベックもその典型のひとつです。

「ドメーヌ・レ・ロック・ド・カナ2011<ヴィノヴァリ>」は、マルベック100%で、モダンな造り。石田氏の「野イチゴや、ダリアやボタンのような大きな花の香り」というコメントが印象的でした。ブラックチョコレートや焙煎コーヒーのような樽由来の香りも豊かでした。

 

<デュラス><フェル・セルヴァドゥ>

デュラスが主要品種となるのはガイヤックだけです。

フェル・セルヴァドゥは、マルシアックの主要品種で、鉄のような香りが特徴的で、ワインに骨格を与える役割を担う品種です。

「ラグラヴ・トラディッション2012<テロワール・ド・ラグラヴ>」は、デュラス40%、シラー40%、フェル・セルヴァドゥ20%という品種構成です。

石田氏が「チェリーなどの種のあるフルーツや、杉や枯れ葉などの植物系の香り」というコメントに解説をつけました。「ハーブ、という言葉は未熟果のニュアンスですが、植物系の香り、ヴェジタルという言葉は、葉や樹皮、森などの発展的な香りに使います」。

 

<タナ>

マディランの主要品種で、色が濃く濃縮感があり、タンニンがとても豊かなワインを造る品種です。

「シャトー・モンテュス2007<ドメーヌ・アラン・ブリュモン>」は、このマディランを世界的に認知させたワインと言っても過言ではありません。2007年と、今回試飲した他の赤ワインより古いにも関わらず、まだとても若々しい状態です。黒いスパイスと黒い果実、ブラックチョコレートなどの香りが豊かで、厚みのある凝縮感のある味わい。そしてたっぷりとしたタンニンが生き生きとしています。時間をかけて飲みたいワインです。

 

まだ他にも多くの面白い品種があるようです。この地方ならでは、というブドウ品種やワインの発掘は楽しいものです。掘り出し物がザクザク出てきそうな玉手箱(コフレ)を開けてみてはいかがでしょうか。

 

Data:

ブドウ栽培面積42,000ha/AOPの数 29/IGPの数 13/存在するブドウ品種の数 130(フランス品種の3分の1)/カタログに掲載されているブドウ品種数 47/AOPで認可されている品種数 35/実際に使用されている品種数 29

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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