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表紙

オリヴィエ・バーンスタイン氏がブルゴーニュでワイン造りを始めたのは、2007年のこと。まだ10年も経過していないにも関わらず、既にブルゴーニュの偉大なドメーヌのワインと並ぶほどの評価を受けています。どうしてでしょうか? 最新の2013年ヴィンテージを試飲しながら、話を聞かせてもらいました。

 

生産量は、年間でわずか24,000本だそうです。基本的には畑を借りて、自ら栽培から行いワイン造りを行うという、ネゴシアンのスタイルです。ただ、2007年からずっと借りていたジュヴレ・シャンペルタン1級シャンポーとマジ・シャンベルタンの2区画だけは購入できたといいます。どの畑のぶどうも古樹で(1か所だけ若い。といっても樹齢20年でした)、1級と特級格付けのみ。初めから、造りたいワインの姿は明確だったということでしょう。

 

「ワイン造りにかかる30か月の間、はじめから終わりまで決して妥協しないこと。ピュアなワインを造ること」という方針も、とてもはっきりとしていました。穏やかな顔つきで丁寧な語り口調なのですが、いかにも厳格そうなので、彼を囲んでいる会場にはちょっぴり緊張感が漂っていました。

 

<いい意味で予想を裏切ってくれた2013年>

「2013年は、ブルゴーニュで7年目のヴィンテージとなりますが、最もよくできた年だと思っています」といいます。どのような年だったのか、まとめてみました。

 

とても遅い収穫で、どちらかといえば痩せた印象で、平均的だと感じた。バランスはよかったから、まずまずよい、といった評価が下された。

2014年の夏に試飲した時にも、あまりよい印象ではなかった。ところが、その後、2014年の10月頃から、より興味深いと感じられるようになり、その後もどんどんよくなっていった。今では、2012年よりもよいと皆でいっている。酸とタンニンのバランスがとても優れている。偉大なヴィンテージといってもよい。

どういう理由でこんなに評価が変わったのか、という点についてはわからないようですが、ともあれブルゴーニュにとって素晴らしいヴィンテージだと記憶しておいてよさそうです。

「2012年より、果実味、肉付き、コシもある。エレガンス、複雑さが備わった純粋な果実が収穫できた。このレベルに達する年はなかなかない」と、べた褒めでした。

ボトル

<畑仕事>

樹齢60年であるとか、80年といった古樹の畑ばかりだといいますが、どのような手入れをしているのか。最も重要な事柄のひとつである、選果について教えてくれました。

 

選果はとても厳しく行うそうです。それも、畑の中で、7月末から8月にかけて3回行うということです。だから、ちょうど今(6月中)は、ひとつひとつの樹を観察している最中です。

「選果台に来てから取り除く30%と畑の中で除去する30%では、まったく意味が違います。樹のサイズ、房の数、房の大きさ、粒の大きさ、これらのバランスが見えるのは畑の中だけですから。もしも、完熟しすぎ、あるいは未熟な果実を除去しなければ、アルコール分にして10%から14%まで、成熟度合いにばらつきが出てしまうでしょうね」。

このように畑の中で厳しい選果をしておくと、他の生産者の畑より早くフェノールが成熟するので、ほぼ1週間早く収穫できるといいます。成熟していながら、高い酸も保ったぶどうが収穫できるのです。収穫量は平均して30〜35hl/haと、極少量です。

 

<セラーの中で>

ジャスパー・モリスMWの話を聞いてから、やはり除梗するかどうかは聞かずにはいられません。

初ヴィンテージの2007年はすべて除梗。

「畑をまだよく理解していなかったことも理由のひとつです。それに、2002年にエマニュエル・ルージェでスタジエをした時に、アンリ・ジャイエと少し仕事をさせてもらったことが影響しているでしょうね」。

2008年は30%全房発酵。

「2008年は、とてもよく熟した年だったので、酸やフレッシュさを与えたいと思って梗を使ってみることにしました。ピノ・ノワールにはフレッシュ感が必要ですから」。

2009年からは50%全房発酵。とはいえ、除梗にも気を遣い、実を一切傷つけないで除梗できる機械を導入したようです。2010年に初めて使ったら、翌年D.R.C.のドゥ・ヴィレーヌ氏が見学に来たとか。

 

樽にもこだわりがありました。オーク材を自分で買ってきて、天日干しも自分でするというのです。2013年は、フォンテーヌブローの森とジュピーユの森のものを半分ずつ。10月初めに樽会社のステファン・シャサンと共にワインを試飲をして、ヴィンテージの特徴を見極めて、焼き加減などを検討するそうです。樽はすべて228lで、100%新樽です。

 

<最後に>

オリヴィエ・バーンスタイン「ここ10年間、ブルゴーニュでは、色、酸、熟成など多くの点で発展してきているから、それ以前より素晴らしいものが出来上がってきていると思います。たとえ平凡なヴィンテージであっても、良いできになるはずですね」と、ブルゴーニュ全体の品質向上についても語っていました。

 

そういえば、シャルドネは興味がないのだろうかと尋ねると「いや、何度か少しだけ造ったけれど、もうすべて売ってしまって在庫がもうないんだ」そうです。赤しか試飲していませんが、きっとシャルドネも……と、想像せずにはいられません。

2区画だけ購入できたといっていましたが、自社畑は今後もっと増えるでしょうか?

「もちろん興味はあるけれど、とても高くて買えないよ。大きな会社が買い始めているからね。2か所の区画も、銀行がお金を出してくれたから手に入れられたけれど」。ということですが、もしかすると少しずつ少しずつ、増えていくのかもしれませんね。

 

<試飲した銘柄>

ヴィンテージはすべて2013年。シャンボール・ミュジニーとボンヌ・マールは比較的早くから楽しめるが、他のアイテムは今開けるのはあまりにももったいない、明らかに長期熟成型だった。緻密でバランスよく、中身の詰まった、じっくり待って飲みたいものばかり。

*シャンボール・ミュジニー 1級レ・ラヴロット  20年の若樹。ボンヌ・マールのすぐ下の畑。

「0.92haのレ・ラヴロットは3名が所有。そのうち1人から借りているが、畑名で出しているのは私だけ。最も飲み始めやすいので、ヴィンテージの状況をみるのに使う銘柄」。

香りは閉じているが、赤い果実の香りがきれいに上品に香る。濃い果実味で、酸もタンニンもしっかり。すべてが一体化して、グリップがある。生き生きとしている。

*ジュヴレ・シャンベルタン 1級レ・シャンポー 樹齢60年

「2年前に0.42haを購入。ここと、もうひとつの畑のぶどうで3,000本ほど造っている」。

より厚みがある香りで、なめし革やスパイスが果実の香りに勝る。凝縮感があり、若々しく、ストラクチャーが強い。

*ジュヴレ・シャンベルタン 1級レ・カズティエ 樹齢80年

「シャンポーが平らなテラスなのに対し、カズティエは急斜面で表土がより少ないのでミネラル感が豊か。ミニ・グラン・クリュと呼びたい」。

とてもタイトで堅い香りで、花と赤い果実が凝縮している。アタックはなめらかだが、酸もしっかりし、更にタンニンが豊かな、厳格な味わい。

  • クロ・ド・ヴージョ 樹齢80年

「2007年は3樽だったが、今は借りる畑が増えたので8樽」。

厚みのある香りで、スパイスや熟した赤い果実など、優雅。果実味が充実しているが、酸、ミネラル、タンニンともに豊かで、引き締まり、厳格な味わい。まだ、とても堅い。

  • ボンヌ・マール 樹齢50年

「ボンヌ・マールの中でも、シャンボール・ミュジニー側。80%全房発酵」。

上品で優雅な香り。スパイスと赤い果実が香る。とてもしなやかなアタックで、酸もミネラルもきれい。木目がとても細やか。タンニンは一見、多くはないと感じるが、次第に現れる。

*マジ・シャンベルタン 樹齢80年

「購入した区画と、上方と下方の2か所の借りている区画のぶどうで。ジュヴレ・シャンベルタンの典型的な厳格さがよく出ている。偉大なワインと肩をならべられると自負している」。

緻密な香り。複雑で、様々な香りが詰め込まれているが、まだ閉じて堅い状態。力強さを感じる。味わいもガッチリと堅く、酸、ミネラル、タンニン、いずれもとても豊かで高い位置でバランスしている。余韻がとても長い。

(輸入元:BB&R ベリー・ブラザーズ&ラッド日本支社)

(text & photos by Yasuko Nagoshi)

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