ワイン&造り手の話

2本横

冷えた白ワインは蒸し暑い夏の対策として欠かせませんが、やっぱり爽やかな香りが立ちのぼる白となれば、更に効果抜群です。日本の夏に香り高い白ワインでアロマテラピーしませんか? の第二弾となる今回は、ロワール地方の個性の異なるソーヴィニヨン・ブランを2種類ご紹介したいと思います。20キロほどしか離れていないのに、随分特徴が変わるんですよね。ひとつは有名なサンセール、もうひとつは小さな地区カンシーより。

 

<ソーヴィニヨン・ブランの香りの変化>

サンセールのフレッシュさは黄緑色から黄色のイメージ。

サンセールのフレッシュさは黄緑色から黄色のイメージ。

ひと昔前は、ロワールのソーヴィニヨン・ブランから造られる白ワインは「緑の香り」「草やハーブの香り」という表現が主流でしたが、今では少なくなりました。色々な条件が整って、ブドウの未熟さに由来する香りが減ってきたからです(詳しい話に興味があるかたは、WANDSの記事/前編後編をご参照ください)。

 

ハーブ系の香りは爽やかでお料理にも合わせやすいのですが、あまり多いと心地よいものではなく、そのためにソーヴィニヨン・ブランの白が苦手だと感じる人も多かったのではないかと思います。最近では、主に柑橘類などのフルーツや花などがロワールのソーヴィニヨン・ブランの香りを表現するのに使われています。ですから、一度苦手意識を持った方でもここ数年のヴィンテージを改めて飲んでみると、イメージが変わるかもしれません。

 

<サンセール VS カンシー>

大御所サンセールと、そこから南西に20キロほどの産地カンシーのワインを比べてみました。ヴィンテージはどちらも2012年

カンシーの方がオレンジ色に近いイメージ。

カンシーの方がオレンジ色に近いイメージ。

 

「ジャン・ルヴェルディ・エ・フィス」の「サンセール ラ・レンヌ・ブランシュ」は、レモン、ライム、スダチ、あるいは黄色いグレープフルーツのような清涼感ある香りで、山の岩清水を連想するような清らかさ。味わいもフレッシュで少し塩っぽさがあって、キリッとした酸も魅力的です。

「ドメーヌ・マルドン」の「カンシー」は、もっと熟した甘い系統の柑橘類を思い浮かべます。オレンジやピンク・グレープフルーツ、柚子の皮など、まるみを帯びた清々しい香りで、味わいもよりふっくらなめらかで、厚みや丸みを感じます。

 

色でいえば、サンセールが黄緑色から黄色、カンシーが山吹色からオレンジ色、といった感じでしょうか。

料理を合わせるなら、どちらも共通してスティックサラダや枝豆などの野菜類はOKです。基本的に白身の魚や肉類、フレッシュなチーズはお薦めですが、どちらかといえば、サンセールのほうが淡白な鮎などの川魚系や白身魚を塩だけで調理などあっさり系で、カンシーは白身でも鶏などの肉類のほうが合わせやすいようです。

 

<カンシーの小話>

ところで、カンシーの小話をひとつ。

 

その昔、カンシーはサンセールよりうんと有名なワイン産地だったといいます。実際にフランスのワインの法律でAOCという原産地呼称の認定を受けたのは、カンシーのほうが先だったのです。現地の人も「サンセールはバーで飲まれるアペリティフ、カンシーはレストランで飲まれる食中酒だった」といいます。

 

ところが、1950年代にワイン産業が危機的な状況に落ち込んだ時期がありました。その時期に、カンシーの多くのワイナリーでは息子たちに、ワイン造りの仕事を継がず近隣の都市ブールジュやパリへ仕事を探しに行くように薦めたのだそうです。

反対にサンセールでは、バーへの販売だけでは飽き足らず、50年代後半にはワインをボトルに詰めてパリへ向かい、営業活動をかえって強化したのです。その結果、60年代からサンセールはパリでお洒落に飲まれる白ワインという地位を獲得したのでした。

 

今では、サンセールはカンシーよりワイナリーの数も生産量も多く、世界的に知られる産地となっているのですから、カンシーとしてはとても悔しい話です。今回のドメーヌ・マルドンなど、古くから続く造り手さんたちが音頭をとって、ようやく最近全体の士気を高める活動をし始めているようです。今後の躍進が楽しみですね。

 

<どちらも老舗>

オシャレな鍋なら、ワインクーラー代わりにもなります♪

オシャレな鍋なら、ワインクーラー代わりにもなります♪

ジャン・ルヴェルディ」のルヴェルディ一族は、1650年代からずっとサンセールに拠点を置き、ブドウ栽培も続けていますが、本格的にワイン造りに特化したのは1950年以降のようです。サンセールの真髄を表現したバランスのよいワインとして定評がある造り手でワイン名の「ラ・レンヌ・ブランシュ」は「白い女王」という命名。所有する一番大きな畑が、そう名付けられた道に沿ってあるからだといいます。白く美しい土壌が目に浮かびます。

 

ドメーヌ・マルドン」の現在当主を務めるエレーヌ・マモー・マルドンで5代目になります。樹齢の古い畑を所有しているので全体的に収穫量が低いため、それもワインの厚みに影響しています。また、環境問題への意識が高く、醸造所で使用した水は屋外につくった浄化槽へ入れてから川へ流したり、有機栽培へ移行したりと工夫しています。

 

ロワールのソーヴィニヨン・ブランはとても爽やかなので、日本の蒸し暑い夏に特にお薦めしたいのですが、ちょっと産地を意識して飲んでみると、よりT.P.O.や好みにぴったり当てはまって、もっと楽しくなるように思います。是非試してみてください!

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

サンセール カテゴリー 白ワイン
ワイン名 サンセール ラ・レンヌ・ブランシュSancerre La Reine Blanche
生産者名 ジャン・ルヴルディ・エ・フィスJean Reverdy et Fils
生産年 2012
産地 フランス/ロワール
主要ブドウ品種 ソーヴィニヨン・ブラン
希望小売価格 3,300円円(本体価格)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション

 

カンシー カテゴリー 白ワイン
ワイン名 カンシー Quincy Au Coeur de La France
生産者名 ドメーヌ・マルドン Domaine Mardon
生産年 2012
産地 フランス/ロワール
主要ブドウ品種 ソーヴィニヨン・ブラン
希望小売価格 2,800円(本体価格)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Related Article