ワインと料理

シャブリ。親しみ深いワインです。でも一時期、いつもシャブリじゃつまらないと、敢えて他の白ワインを選ぶ人も多かったとか。「最近シャブリも変わってきましたよ」とシャブリワイン委員会会長のルイ・モロー氏とソムリエの佐藤陽一さんが口を揃えていう理由は? そして、シャブリと和食の関係を探りました。

 

<シャブリの変化>

シャブリ離れの時代が、どのぐらい続いたのかは定かではありません。ただ、振り返ってみると1年間で1度もシャブリを飲まなかった年が、もしかするとあるかもしれない、とも思います。それはさておき、ルイ・モロー氏と佐藤陽一さんの意見をまとめると、こうなります。

ボトル/クーラー

* かつての酸っぱいイメージはなくなった→ ただし「ミネラル感」が増している。

* 直線的でグリーンなイメージもなくなった→ なめらかさや深みが出てきている。

* 総合的にいえば、アロマが高くテンション/緊張感のある白ワイン。

シャブリ全体のベースアップがされてきて、より心地よく楽しんでもらえる白になっている、ということです。ただ、一口にシャブリといっても、格によって幅がありますし、造り手の志向によって味わいの体系が異なります。格付けはラベルを見ればわかりますが、造り手のタイプはワイン・ショップや飲食店の方にあらかじめ聞いてから注文することをお薦めします。

 

<和食との相性!>

実際に試してみることができた、好相性例をお知らせします(ワインの詳細は下方にて)。

*白アスパラガスの豆腐 × 少し香ばしさのあるプルミエ・クリュ(3. ヴォー・ド・ヴェイ2011<ドメーヌ・ジャン=マルク・ブロカール>)

*小茄子の素揚げ × シャブリ、プルミ・クリュ全般 (1. 2. 3. )

*コーンの天ぷら × シャブリ、プルミ・クリュ全般 (1. 2. 3. )

*椀物の中の ハモ × フレッシュでとてもバランスのよいシャブリ(1. シャブリ・ヴィエイユ・ヴィーニュ2011 <ドメーヌ・セルヴァン>)

*シマアジ刺身+醤油少々+ワサビ × シャブリ、プルミ・クリュ全般(1. 2. 3. )

*イカの刺身+塩 × フレッシュ感にあふれるプルミエ・クリュ(4. モン・ド・ミリュー2011<ドメーヌ・ウイリアム・フェーヴル>)

*カンパチの焼物 × シャブリ、プルミ・クリュ全般(1. 2. 3. )

*豚の角煮 × 香ばしさやなめらかさのあるプルミエ・クリュ、グラン・クリュ(3. 5. 6.)

*瓜の漬け物 × フレッシュでとてもバランスのよいシャブリ(1.シャブリ・ヴィエイユ・ヴィーニュ2011 <ドメーヌ・セルヴァン>)

白アスパラガスの豆腐だけはちょっと日常的には困難そうですが、他のものは真似できそうです。具体的なワイン名とその特徴も参考までに記しておきますので、この夏にシャブリ&和食を是非体験してみてください!

 

<付記:格付けと造り手によるタイプの例>

1. シャブリ ヴィエイユ・ヴィーニュ2011 <ドメーヌ・セルヴァン> 輸入元:出水商事 フレッシュで、清々しく、なめらかでバランスよい!

2. シャブリ プルミエ・クリュ ボーロワ2011<ラ・シャブリジェンヌ> 輸入元:モトックス 香ばしさがあり丸みもあり、最後にキリッとした固さあり。

3. シャブリ プルミエ・クリュ ヴォー・ド・ヴェイ2011<ドメーヌ・ジャン=マルク・ブロカール> 輸入元:テラヴェール 香ばしさ、熟した果実の香りと、まろやかな味わい。

4. シャブリ プルミエ・クリュ モン・ド・ミリュー2011<ドメーヌ・ウイリアム・フェーヴル> 輸入元:ファインズ タイトでフレッシュで、芯があり、まだとても若々しい。

5. シャブリ グラン・クリュ ヴォーデジール 2011<ドメーヌ・ローラン・ラヴァンテュルー> 輸入元:ヌーヴェル・セレクション トロピカルな果実と香ばしさ、ボリューム感がある。

6. シャブリ グラン・クリュ レ・クロ・デ・ゾスピス2009<ドメーヌ・ルイ・モロー> 輸入元:豊通食料 ツヤと厚みを感じる香りで、深みや力があり、まだ若々しく、しばらく待ちたい。

 

<付記:ミネラル感とは>

「ミネラル感」という言葉は説明するのが難しい感覚なので、モロー氏たちにその解釈を聞いてみました。

「フレッシュで生き生きとした感じ」

「ビーチを散歩している時に海風を受け、潮を感じるニュアンス」

「山のきれいな沢で川底の石を拾い上げ、かじってみるような感覚」

それぞれ微妙に表現が異なるところが面白いですね。

自分なり考えてみたところ、酸味に近いけれど、鋭角的な「酸っぱい」という受け止め方ではない、固さのあるフレッシュ感、といったところでしょうか。

 

<付記:シャブリのヒエラルキー>

*ヒエラルキーのトップを飾るシャブリ特級/グラン・クリュの生産量は、全体の2%のみです。価格が最も高いだけでなく、長期熟成型のため若いうちにはあまり真価を発揮しないため、数年寝かしておいてから飲みたいワインです。そしてこのグラン・クリュには、質の高い料理を準備したいものです。

例えば「アルマーニ」ブランドの中のジョルジョ・アルマーニのラインを考えると、価格が高いだけでなく生地も縫製も質が高いため、長持ちします。ただ、あまり若い層では洋服に着られてしまう可能性があります。トータルで似合うには、いくつかの要素が必要となります。

*シャブリ1級/プルミエ・クリュの生産量は14%を占めています。グラン・クリュに近い質のものもありながら、やはり少しカジュアルなイメージで、もう少し気軽に飲めるラインです。開けてみて「まだちょっと固いな」と思ったら、デキャンタして空気に触れさせて飲みやすく演出してもよいかもしれません。

これならアルマーニ・コレッツィオーネでしょうか。大人のちょっとカジュアルなライン。オシャレだけれどカジュアルすぎず、仕事にも充分使えるので使い勝手がよいでしょう。

*格付けのない通常のシャブリ。ここが一番のボリュームがあり、66%を占めているようです。畑そのものの個性より、造り手の意志のほうが表れやすいかもしれません。スタンダードのシャブリでお気に入りを見つけたら、同じ造り手のプルミエ・クリュ、グラン・クリュを探してみるとよい、入門編ともいえるカテゴリーです。

敢えてアルマーニに喩えれば、価格も手頃でカジュアルなエンポリオ・アルマーニが合いそうです。日常生活で大活躍のラインですね。

*底辺にあるプティ・シャブリは生産量の18%のみですから、それほど出会う確立は多くないかもしれません。よく冷やしてアペリティフにしたり、最も気軽に飲めるラインです。アルマーニ・ジーンズ的なお手軽感があります。

 

シャブリも洋服のように、T.P.O.に合わせて使い分けてはいかがでしょうか。

(撮影/八芳園・壺中庵)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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