ワイン&造り手の話

Point: ほどよい力強さとバランス感覚を合わせる

レストランのグラスワイン、ケーキショップのショートケーキもしくはシュークリーム。いずれもとても大切な存在です。どんなお店か知るための第一歩となるものですから。ローヌのトップクラスに君臨するギガルにとって、コート・デュ・ローヌの赤も、まさにそういう存在だと思います。ここでもまた、確かな品質のためにはまったく妥協しない姿勢が手に取るようにわかるところが、さすがです!

 

でも実は、ギガルのコート・デュ・ローヌの赤を飲んだのは久しぶりでした。白はちょくちょく飲んでいたのですけれど。現在市場にあるのは、2010年ヴィンテージ。しばらく会わないうちに、ちょっと印象が変わったような。

以前は、もう少し柔らかいというか、甘いマスクの好青年のイメージでしょうか。ただ今回は、もう少しビシッときまった、精悍さが感じられます。

 

ご存知のようにギガルの拠点は北部ローヌにあります。コート・ロティの3兄弟に加えて、続々と注目のアイテムが加わっています。

そしてこのコート・デュ・ローヌ ルージュの場合には、南部ローヌから買い付けるワインをブレンドして大樽で1年半熟成させているものです。ワインで買い付けするのは、法律上の制約があるからです。

さて、ギガルの品質へのこだわりようは、こんなところからもわかります。

1)格上のヴィラージュ・クラスや、リラックやヴァケイラスといった独立してAOCのラベルで販売できるワインも使っている。

2)品質が見合わない場合には絶対に買わないので、毎年供給先が変わる。例えば、2008年ヴィンテージは天候が思わしくなかったため、コート・デュ・ローヌの赤は結局1本も造らなかった。

3)360社からワインを購入するにあたって、造り手はもちろん、値段も明らかにしないでブラインド・テイスティングして買うワインを決める。

なるほど! と、合点がいきます。

 

 

こういった強い信念のもとに造られた2010年は、ハツラツとした香りで、ザクロ、ブラックチェリー、プラムといった果物の香りに加えて、スミレの花のニュアンスが、ゆっくり後から開いてきます。

香りも味わいもほどよい濃さで、ほんのりとしたスパイシーさも感じられ、バランスよくなめらかな食感。そして次第にフレッシュな酸と細やかなタンニンが顔を出す、といった感じ。

若々しく、勢いのある味わいで、満足感が高い1本です!

一般的なコート・デュ・ローヌに感じる、軽さはありません。ただ、重すぎず、濃すぎず、強すぎず。ですから、もちろん肉料理をガッツリいくのもよいですが、今回は魚を合わせてみることにしました。

ギガル/マグロ

まずは、マグロの生ハム巻き焼き、トマトソース。

マグロ丼用の角切りマグロを使いました。バチマグロでそれほど脂はありませんから、生ハム(日本の生ハム)でぐるりと巻いて味のインパクトを加えて、ソテーしてから粗挽き胡椒をふりかけて(トマトソースはなくてもよいかと/味つけは最後の粗挽き胡椒だけで、塩味はハムからで充分だと思います)。

味の強さがちょうど合って、ジューシーな味わいになります。

 

ギガル/ブリもうひとつは、ブリの照焼き。

合わせるための工夫としては、照焼き用のタレを甘くしないことでしょうか。恐らくタレは「酒、みりん、醤油(+砂糖)」というのが一般的だと思いますが、今回は、「酒+赤ワイン、醤油」の辛口タレ。

合わせてみると、ワインの酸もタンニンもすっかり溶け込んでまろやかな味わいになります。もし血合いが苦手でなければ、是非血合いや皮の部分も食べてください。より味が濃厚なので、素晴らしい相性です。

 

魚から肉料理まで、幅広く楽しめる、強力な1本です!

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

 

ギガル赤表紙 カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 コート・デュ・ローヌ ルージュCôtes du Rhône Rouge
生産者名 E. ギガル E. Guigal
生産年 2010
産地 フランス/ローヌ
主要ブドウ品種 シラー55%、グルナッシュ35%、ムールヴェードル他10%
希望小売価格 2,000円(本体価格)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
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