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1997年が初ヴィンテージのアルマヴィーヴァ。チリのマイポ・ヴァレーで始まった、ボルドーのバロン・フィリップ・ロッチルドとチリのコンチャ・イ・トロによる壮大なコラボレーションです。「シャトー・コンセプトに基づいて造るチリワイン」の変遷を、トライアルで造った未発売の1996年から2003、2007、2009、2012年まで見させてもらいました。

 

今年の夏に天に召されたバロネス・フィリピーヌ・ロッチルドは、初めてチリのコンチャ・イ・トロを訪れた時に、とても驚いたようです。まったく異なる環境でありながら、ボルドーと同じような精神、方向性、努力をしてワイン造りをしている姿を見たからでした。それからすぐ、このプロジェクトが始まったといいます。

 

<プエンテ・アルト地区>

気候場所は、コンチャ・イ・トロが既にフラッグシップのドン・メルチョーを造っている、マイポ・ヴァレーのプエンテ・アルト地区。首都サンチャゴの南にあり、アンデス山脈のすぐ麓にある高地で、夜間にはアンデスからの冷風が吹き降りる場所です。このため、夏でも冬でも日較差が20度もあります。標高の高さも伴ってブドウの成熟がゆっくりなため、ここでは5月半ばぐらい(北半球で考えると11月半ば頃)までと、遅くまで収穫が続きます。

とはいえ、この地の雨期は6月から8月で、その他の時期はほとんど雨が降らないため、寒暖の差とアンデスからの冷風のおかげで健全なブドウが収穫できるというわけです。

 

ただ水不足には注意が必要で、ここでは2段階のイリゲーションを行っています。ひとつはいわゆるドリップイリゲーションで、チューブから水滴を落とすタイプ。もうひとつは地下80〜90センチにチューブを埋め込んで行うシステム。前者はブドウの生命保持(あるいは水分ストレス回避)に必要な水分を供給し、後者は根が地下深くまで伸びるように促すためのものです。

 

60ヘクタールの畑には、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にして、カルムネール、カベルネ・フラン、メルロ、プティ・ヴェルドが植えられています。1978年からヘクタールあたり2,000〜4,000本の植樹密度で栽培が始まっていましたが、2001年に植え付けた畑ではボルドー風に8,000本にして台木も使っているといいます。石ころだらけの区画から粘土質が多い区画まで、土壌のタイプは様々です。

 

<収穫から醸造へ>

収穫は10キロ程度入る小箱で、選果しながら手摘みで行われます。成熟したブドウだけを選んで収穫するため、4週間という長い収穫期になるとか。醸造所へ運ばれたブドウは、2005年からは2つの選果台を用いて、ひとつめで房の選別を、ふたつめでは除梗の後に粒での選別を行うようになりました。目的は、タンニンの粗さやドライさを避け、フィネスを求めるためです。

 

発酵はステンレスタンクでマセレーションも含めて20〜35日。2007年から少しずつ天然酵母での発酵を増やしているといいます。その後の熟成は、フレンチオークの小樽で16〜18ヶ月。新樽率は75〜85%。

アルマヴィーヴァの造りは、初期と現在とでは多くのことが異なります。小さな区画ごとでの発酵を始めたのが2005年頃から。他にも、マセレーション期間が短くなり、新樽率は少なくなり、樽のトーストも低くなってきているのです。

 

醸造長現在醸造長を務めるミッシェル・フリオ氏は、2004年までカサ・ラポストールにいてクロ・アパルタの誕生にも立ち会った人物です。その後にバロン・フィリップのエスクード・ロホに関わり、2007年からアルマヴィーヴァへ。チリ最良ともいえるふたつの畑を知る人物は、プエンテ・アルトをこう語りました。

「とてもよい立地です。収穫の時期には気温が下がり始めていますからね。アルコール度数もだいたい14.5から14.9ぐらいまでで、フレッシュさもあります。成熟感とフレッシュさ、これを両方とも得られるというのが素晴らしいことだと思っています」。

 

1996年から2003、2007、2009、2012年までの詳細については、後編をご覧下さい。

取材協力:(一社)日本ソムリエ協会

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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