おしゃれに飲む

去る11月。髪を鮮やかなレッドに染めた米国人女性が、東京にいた。米国・ニューヨークを舞台にしたテレビドラマシリーズ『Sex and the city』や、同じくニューヨークを舞台にした映画『プラダを着た悪魔』などの衣装を担当したスタイリスト、Patricia Field パトリシア・フィールド、73歳だ。

 

今回、1980年代のアメリカ美術を代表するポップアートのアーティスト、キース・ヘリングの没後20周年を記念したキース・ヘリング美術館とのコラボレーションのために来日。インタビューは、Uber Japanが手配する特別車の中でおこなわれた。

 

目を惹くファッションに身を包んだ若者達に囲まれて、一際、鮮やかな存在感。次は私のインタビューの番だと告げると、自ら近づいてきて笑顔でハグをしてくれた。低い声、穏やかな口ぶり。ゆっくりと答えを探しながら語るそのひとことひとことは、長年、ニューヨークの最前線でファッションに携わってきた女性としての重みと、これからもその風の中を歩いていくのだという静かな確信が伺えた。

 

Miki(以下M) 今回はワインのサイトでのインタビューですが、パトリシアさんはシャンパーニュやワインはお好きですか?

 

Patricia(以下P) もちろん。シャンパーニュを飲む時はフルーツジュースで割ることが多いわ。ピーチで割ってベリーニにするのが大好き。カクテルみたいにして飲むのが好きなのよ。

 

M 日本でもワインパーティーなど、パーティーシーンが増えてきて、そういう時のファッションについて相談を受けることが多いのです。パトリシアさんだとどういうアドバイスをなさいますか?

 

パトリシア・フィールドさん(クリックすると大きな画像で見られます)。

パトリシア・フィールドさん(クリックすると大きな画像で見られます)。

P ニューヨークだけに限らず、今の時代はカームダウンに向かっていると思っているの。キーワードはレイドバック、カジュアル、リラックス…そういう人が増えてきている。私自身のことをいうと、東京に来るときは、映画のプロモーション等でパーティーに出席することも多いけれど、ドレスは何も持ってこないの。

 

もはや「ドレスアップ」の定義は変わってしまったのよ。今「ドレスアップする」という言葉の意味は、何かオリジナルなスタイルであること。

 

若い人は実にカジュアルでオリジナルなファッションが得意。ジュエリーをゴテゴテつけるなど、過剰なドレスアップをしている人は…年配者のことが多いわね(笑)。もはや、そういう、行きすぎたドレスアップはレッドカーペットの上のものでしかない、ということ。

 

ちなみに私は今夜のパーティーにこのままの格好で行くの。私がドレスを着ない理由? 快適ではないからよ。私にとってもドレスアップの意味は変わってしまったの。オリジナルであることが大切。それが今のカルチャーということね。ファッションは社会の鏡だから。

 

質問に答えるとすれば…何かあなたらしい、オリジナルなファッションであるように、とアドバイスすると思うわ。

 

M ファッションはその人の気分を変えるための助けになると思うのですが、自分を変えたい、人生を変えたいと思うときもそうでしょうか?

 

P 洋服はその人のムードを変えることができる。あなたがどうなりたいかという助けにはなる。けれど、人があなたから何かを感じるとすれば、それは着ているジャケットからではなく、あなた自身の中からくるものなのよ。

 

洋服やアクセサリーはただのモノに過ぎない。生きている生身の人が重要。ファッションはコミュニケーション・アートなのよ。あなた自身がどういう人間か、どう生きていくか、ということが最も大切なの。

 

 

IMG_5452_02多くの美しい、個性あふれる女性達をそのセンスでドレスアップさせてきたパトリシア。その口から「ファッションはただの手段に過ぎない」という言葉を聞くことになるとは! それは、経験した者にしかわからない真実なのだろう。

 

自分にとってのオリジナルなものとは何か。自分自身を磨き続けているか。ファッションをめぐる私の旅はまだまだ続いていきそうだ。

 

取材協力:Uber Japan(リンク

(text & photo by Miki Ikeda)

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