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フランスの南西地方=シュッド・ウエストといえば、ワインはそれほど有名ではないかもしれませんが、美食の地として知られています。フォアグラ、バスクの豚で作った生ハム、鴨のコンフィ、プルーンなどなど、食指が動くものがたくさんあります。面白いことに、この地方にはとてもたくさんのブドウ品種が存在していてコフレ(玉手箱)のようだ、と言われています。ここにしか存在しない土着品種に興味のある方は、是非覗いてみていただきたい世界です。

石田氏

今秋プロ向けに開催された「ヴィネクスポ・ニッポン」で行われたセミナー「セパージュのコフレ(玉手箱)」<講師:石田博氏/ワイナリーレポート:西田恵氏>のレポートです。南西地方の概要は、こちらもご参考に。

 

<ランドレル=ロワン・ド・ルイユ Len de l’El>

南西地方の中でも東部に位置するガイヤックの固有品種/白

フローラルで爽やかな白ワイン(微発泡も)を造る品種と言われていますが、石田さん曰く「大半はジャスミンなどのアロマティックな香りのするモーザックとブレンド」されます。

「エスプリ・ペルレ・ドゥ・ラバスティード2013<カーヴ・ド・ラバスティード>」は、まさにランドレルとモーザック(+ソーヴィニヨン・ブラン)がブレンドされた、マスカットや小さな花が香る、フレッシュでほどよい軽快感なので、食前酒にぴったり

→ ガイヤックは、紀元前2世紀からブドウ栽培をしている古い産地です。一時期衰退したものの、10世紀からベネディクト派の修道士がワイン造りを発展させました。1970年代になってから、伝統品種を復活させる動きが始まり、多品種から様々なスタイルのワインが造られています。

 

<ユニ・ブランとコロンバール>

主に、広い産地ガスコーニュで栽培されている品種/白

「どちらも香りがそれほど強くない、ニュートラルな品種で、酒質の強さや酸はある」と石田氏。

「ドメーヌ・デュ・タリケ・クラシック2013<ドメーヌ・デュ・タリケ>」(ユニ・ブラン、コロンバールを主体にソーヴィニヨンとグロ・マンサンをブレンド)は、オイリーなニュアンスのあるパイナップル的な香りや柑橘類。果実味も酸も適度にバランスし、チャーミングでフレッシュな味わい。

→ガスコーニュは、5世紀からワイン造りが始まった産地で、アルマニャックの産地として有名。1982年にユニ・ブラン(アルマニャックに使われる品種)から初めて辛口白を造ったのが「タリケ」。現在、スティル・ワインの可能性があると考えられて多くの品種の栽培が始まっています。

サンモンなど

<プティ・クリュビュ>

ピレネー山脈とボルドーの間にある産地、サンモンで栽培されている品種/白

ブレンドに使われることが多い品種。

「ランプラントゥ・ド・サンモン2011<プレモン・プロデュクター>」では、粘性のあるグロ・マンサンにブレンドされていました。

この銘柄は、バニラやスパイス、トロピカルフルーツ的な熟した黄色い果実のふっくらした香りで、味わいも豊かでしたが、「リッチな味わいを目指した造りで、濃密な印象」という石田氏の言葉にもあるように、ブドウ品種の個性より造りの個性のほうが強い印象を受けました。

ただ「このワインの粘性や厚みを生かすために、少し高めの温度でのサーヴィスを」すれば、様々な料理の友になりそうな、汎用性の高いワインです。

→ サンモンには、プレフィロキセラの畑、しかも21品種が混植されている畑が残っているそうです。一体どのような品種でどのようなワインができるのか、興味深いですね。

 

Data:

ブドウ栽培面積42,000ha/AOPの数 29/IGPの数 13/存在するブドウ品種の数 130(フランス品種の3分の1)/カタログに掲載されているブドウ品種数 47/AOPで認可されている品種数 35/実際に使用されている品種数 29

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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