東澤壮晃の楽しい嬉しい美味しいヒント 〜今夜は「桜」がワインを楽しくさせる!〜
02/13
サクラのラベルでお馴染のこのオーストラリアワインをご存知ですか?
なぜ、遠く離れたオーストラリアで「SAKURA」の文字を刻み、「SAKURA」の絵が描かれたワインが造られたかというと、今ではご存知の方も多いはず。
ご存知なければ是非ご一読下さい。
今年は2012年ヴィンテージが2月初旬に発売され、一足早いサクラを待ちわびたファンによって、桜が咲く前に飲みきってしまうのではと言う人気っぷり。
すでに、私の周りでは季節の風物詩となっていますが、サクラの絵がなぜこのボトルに描かれるようになったのかを、簡単にまとめてみたくなりました。
なにせ、私1973年生まれ。このサクラ シラーズが生まれた、カウラに初めてブドウの木が植えられたのも1973年。この記事を書くご縁と思って。
1944年8月5日、深夜1時50分、日本人231名、オーストラリア人4名の死者と、多数の負傷者を出した、近代軍事史上最大の戦争捕虜脱走事件がカウラで起こりました。
カウラの人々は事件で命を落としてしまった日本兵を手厚く葬り、日本との友好関係を深めるために本格的な日本庭園や日本文化センターを作りました。
さらには日本人墓地から日本庭園までの5kmの間に約2000本の桜を植え、毎年桜祭り(10月頃)が行われるようになったのです。
国際理解を象徴する並木道としての桜。
「ウインダウリ・エステート」が、この桜をモチーフに作ったのが「ウッドブロック・サクラ シラーズ」のラベルです。
事件については非常に短く書きましたが、もう少し詳しく知りたい方は「カウラ事件」などのキーワードで検索してみてください。
それでは、ワインの話をしましょう。
カウラとはワインにとってどのような地域なのか?
オーストラリアのワイン産業の起源は、カウラがあるニュー・サウス・ウェールズ州(以下NSW州)にあります。ブドウの栽培は1790年代にシドニー周辺で始まり、1820年代になってハンター・ヴァレーに広がりました。
同州のワイン産業は現在もハンター・ヴァレーで盛んであり、13の高級ワインの産地を有しています。NSW州は、良質のワインから酒精強化ワインを含む濃厚な味わいのデザートワインまでの生産に最適な気候に恵まれ、現在ではオーストラリア国内の23%の生産量となっています。
そのNSW州にあるカウラ、初めてブドウの木が植えられたのがたった42年前という新しいワイン生産地ですが、この40年ちょっとの間に、62箇所あるオーストラリアワインの主要な産地の一つとして数えられるようになりました。
カウラ地域はNSW州ラクラン川谷周辺の1,250平方キロメートルのエリアをカバーする地域、日中は温暖で夜間は冷涼、夏の到来は遅く乾燥しているという気候です。
この気候は、ワイン用ブドウが成熟する上で最高の条件となり、今では小規模のブティック・ワイナリーから大規模な企業ワイナリーまで、実に多種多様なワイナリーがあります。
シャルドネを筆頭に、昨今では若い生産者がサンジョヴェーゼ、マタロ(ムールヴェードル)、テンプラニーリョなどのオーストラリアにとって新しい品種のワインを生み出しています。
サクラ シラーズを手掛けるウインダウリー エステートは、カウラ地区初のブティック・ワイナリー。
このあたりは非常にのどかで四季があり、野鳥も多く、ウインダウリーの畑にはカンガルーや野うさぎが走り回っています。
広大な大地600ヘクタールに植えられている葡萄はシャルドネ、ソービニヨンブラン、ヴェルデーリョ、セミヨン。赤ブドウはシラーズ、カベルネソービニヨン、メルロー、サンジョベーゼ、テンプラニーリョなど。
大変風通しが良くブドウは年間を通して充分な日射量を得て完熟します。栽培はできる限り自然な形でと殺虫剤は一切使用されません。
サクラ シラーズは良作年のブドウのみ使用し造られる為、私の記憶が正しければ、これまでのヴィンテージは1996,98,99,03,05,08,11,そして今年リリースされた2012のみ。
熟したベリー。コヒービーンズやバニラの香り。味わいはリッチなベリー類、リコリスのニュアンス。よく熟した豊かなタンニンが力強さを加えていますとはインポーターさんの話です。
さて、今年はどんなワインに仕上がっているのか?
えっ、まだ飲んで無いの?と思ったでしょ?
入荷したのですが、即日完売してしまい、私の手元に1本も残らなかったのです(だからこの時点で、私の分は次回入荷待ち)。
実はまだ訪れた事が無い土地(近くまでは行った事があるのですが)の、まだ飲んで無いヴィンテージのワイン(本当は飲んでいる予定でした)を記事にするという怖いもの知らずですが、桜の咲く頃にカウラの近くまで行く用事が出来たので、少し足を伸ばしてみようと思っています。
その話はまた機会があれば。
今回、肉は登場しません・・・
(text & photo by Moriaki Higashizawa)
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