池田美樹のおしゃれとワインのいい関係 〜マスキングテープをグラスマーカーに! 文具とワインのいい関係を発見〜
02/23
別の分野のものをヒントにして商品を開発したり、ビジネスに応用したりという話をよく聞く。仕事モードでいるときは、なるほど、この考え方を何かに活用したい! と思うのだけれど、いったん仕事を離れるとすっかり忘れてしまう。
それがある日、ワインを飲むシーンで急に「こういうことだったか!」と気づくという経験をした。
「仮免葡萄会(かりめんぶどうかい)」という名前のラウンジイベントを昨年から主催している。私の周囲に多い、フルタイムで会社勤めをする女性たちの「ワインってちっともわからないから、気軽に飲めない」「ワインって何かそれに合ったおつまみをつくらなくちゃいけないから、面倒で飲まない」といった切実な声を聞いて「なーんにも考えずに楽しく飲んでみようよ」という気持ちを伝えるために始めたものだ。
飲んでも飲んでもいっこうにワインに詳しくならない私なので、テーマだけを設定し、ワイン選びや解説は、ワインナビゲーターやインポーター、作り手の友人をゲストに招いてお願いするというスタイルにした。私は編集者なので、自分に何か得意分野があるわけではなく、専門家の力を借りてページをつくるのが仕事。イベントにもそのスキルを活かしホストに徹することにした。
女性だけ限定6名という少人数で、友人の事務所を借りて土曜の昼下がりに開催する。まあ、つまりはワインをダシにして女たちが集う、井戸端会議だ。
そういう趣旨なので、集まってくる女性たちはワインに詳しいわけではなく、まずは「久しぶりに美樹さんに会いたい」という人、「美樹さんのお友達の女性が集まるから私も話が合いそう」という1人での参加が多い。
ある日、この会に総勢12名が参加するということになった。だんだん酔ってくると自分のグラスがわからなくなってくるのは世の常。私は自宅にグラスマーカーを持っているが、友人の事務所にはそういったものはない。するとある参加者が「これを使いましょう」と、マスキングテープを取り出した。
マスキングテープとは、手で簡単にちぎれて、どこに貼っても剥がしやすい紙テープ。もともとは塗装などの際に養生や保護などのために使われていたテープが、今やさまざまな柄がプリントされておしゃれ文具としてひとつの文化圏をつくっている。
彼女はいつも、薄いアクリルの板に数種類のマスキングテープを巻き付けて手帳に挟んで持ち歩いているのだそうだ。ちょっとしたときに役に立つんですよ、今日みたいな時にも、といってにっこりと笑う。
「私はこれ!」「じゃあ私はこれとこれ」「じゃあ私はそこじゃなくてここに貼ってみるね」と、会場は一時マスキングテープのワークショップ会場と化した。「持ち歩いてどんなときに使うの?」「このアクリルの板はどこで手に入るの?こうやって持ち歩くのっていいね」などと、話が弾んでいる。
そう! ワインのための小物を買うのはワインショップであり、ワイン向けにつくられたものだと思い込んでいた。けれど、おしゃれ文具がこんなシーンで活躍してくれるとは。まだまだ、他の分野のモノやアイディアを使えばワインを飲むときに楽しめそうだな、という素敵な新発見だった。
(text & photo by Miki Ikeda)
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