ワイン&造り手の話

ブルゴーニュ・ワイン好きにとって、最近のヴィンテージの状況はとても気になるところではないでしょうか。というのも、ここ数年、毎年のように例年より収穫量が少なくて、日本に輸入される量もそれに比例して減ったり、価格が上がったりしているからです。隣国でブルゴーニュに火がつかないことを、祈る方も多いのかも。ともあれ、既に入荷し始めている2012年ヴィンテージについて、ラック・コーポレーションの大試飲会でのテイスティングと客観的な情報から、概略をお伝えします。

 

短時間ではありますが、赤白ともに合わせて30アイテム弱を試飲しました。全体を通しての共通の印象は、バランスがよいことでした。果実味、酸味、赤の場合はタンニンも含めて、高いレベルで均衡しているので、きっとこのまま綺麗なバランスを保ちながらゆっくり熟成していくのではないだろうか、と思わせるニュアンスがありました。

 

ヴィンテージによっては、若い段階では堅く閉じていて、次第に開いてくる年があります。あるいは、早くから香りが華やかに開いてボリュームがありながら、熟成のピークが早いという年もあります。2012年の場合は、最初からバランスよく、それを保ちながらずっとよいバランスで熟成していくタイプの年のように感じました。

 

近年のブルゴーニュでは、2010年もとてもバランスがよく熟成可能なヴィンテージですが、ブルゴーニュに毎年足繁く通うブルゴーニュ通の人物によると「それでも2012年のほうが凝縮感があって、完成度が高い」とのこと。期待できそうです!

ラック2012赤

そして、確かな筋の情報も調べてみました。

やはり「収穫量は少ないけれど品質はとても高い」という見解ばかりです。香りが魅力的で、豊かな果実味で、酸も凝縮感もあり、赤については洗練されたタンニンを備えている。結論としてはこんな感じ。

どのような成長期だったのか、追ってみましょう。もちろん、場所によって誤差がありますので、あくまでも概要です。

 

3月は、ドライで暑く、2007年より早い発芽。

4月は寒く、湿度も高く、べと病やうどんこ病が出始めた上、雹まで降った。

6月に開花が始まったが、3日に1度は雨、というような天候で、開花期間が1ヶ月ほどと長引いて、結実不良などを引き起こした。

6月末には、数日の熱波に襲われて、一部の日焼けしてしまった房を除去することに。

7月になって、ようやく穏やかな気候に戻った。

8月は、場所によっては初旬に雹が降ったが、とても暑く乾燥した夏。それまでに土壌が水分をたっぷり蓄えていたので、まったく問題なく成熟が加速された。

9月下旬に収穫開始。若干雨の日もあったが、果皮が厚くなっていたことと気温が下がっていたことから、ボトリティスの心配なく、健全なブドウを収穫!

 

ともかく、成長期の前半はまったくよいところがなく、畑の中では大童(おおわらわ)だったようです。開花の時点から、病気や結実不良で収穫量が減ることは確定していたといいますから、心労が多かったことでしょう。ただ、マイナスな要因がとても多かったために、畑での懇切丁寧な手作業が余儀なくされたことが、素晴らしい収穫を得られた一因にもなったのです。

 

小さな房、小さな粒、厚い果皮、そして糖分が充分に上がりながら、アロマと酸も保った、健全なブドウが収穫できました。とてもクラシックなヴィンテージです。ただ、特にコート・ドール南部のコート・ド・ボーヌについては収穫量が例年の半分未満といいますから、大事(おおごと)です。そんなわけで、日本だけではなく各国での販売価格も急騰しているようですが、誰もが、それでも充分に価値のある傑出したヴィンテージだと絶賛しています。気になる方はお早めに!

 

いくつか印象に残ったアイテムを記してみます。

ラック2012モレ白モレ・サン・ドニ アン・ラ・リュ・ド・ヴェルジィ・ブラン<ブリュノ・クレール> 10,000円/香りがとても華やか。なめらかな食感で、厚みがあり、ソフトでバランスのよい味わい。今でも美味しく飲み始められる。

シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ・レ・ヴェルジェ<アミオ・ギイ・エ・フィス> 10,500円/若々しい香り。味わいも少し堅めな印象でミネラリーながら、バランスは抜群。少し置いておくかデキャンタして。

シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ・レ・ショーメ・ブラン<フィリップ・コラン>  9,800円/香ばしく、熟した果実のまるみを感じる香り。味わいもまろやかで酸もソフト。ボリューム感があるリッチな味わい。今でも美味。

ピュリニー・モンラッシェ プルミエ・クリュ・レ・フォラティエール(リンク先は2011年)<シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェ> 16,000円/香りがとても華やか。厚みのある味わいで、口中で蜂蜜のような香りもする。

 

ラック2012フィクサン赤

ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ・ルージュ<ニュダン> 3,200円/果実と花の香りがとても華やか。繊細でなめらかな味わいで、今でも美味しい。

 

マルサネ レ・グラス・テット<ブリュノ・クレール> 6,800円/スパイスや果実の香りがハツラツとしている。凝縮感のある味わいで、全体になめらかながら、タンニンはまだまだ若い。

フィクサン ヴィエイユ・ヴィーニュ<ペロ・ミノ> 9,000円/とてもフルーティーな香り。味わいはなめらかでジューシー。タンニンがこなれているので、今からでも美味しく飲める。

シャンボール・ミュジニー<デュジャック・フィス・エ・ペール> 7,500円/香りがとても華やか。とてもなめらかな食感で、次第にしっかりとしたタンニンが顔を出してくる。今からでも楽しめるが、デキャンタするのがベター。

(tex t & photo by Yasuko Nagoshi)

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