ワインと料理

シャルドネだけで造る、上品なクレマン・ド・ジュラはとても印象的でした。また、お寿司のお伴にしたいと思います。その造り手「ドメーヌ・グラン」は、ジュラ地方の伝統品種でスティルワインやヴァン・ジョーヌのシャトー・シャロンも造っています。いずれも珍しい品種なので、白編でサヴァニャンを、赤編でトルソー、プルサールの特徴を探し、お料理合わせも試みました。

 

さて、今回は赤3種類です。「ドメーヌ・グラン」のプルサール、トルソー、ピノ・ノワールの味見をしながら、こんなふうに思いました。

肩肘張らず、週末などゆっくりと過ごしたい時に、自然体でリラックスして飲みたいワイン。癒しのジュラ、とでもいいましょうか。そういう気分にさせてくれました。

 

まずは、ブドウ品種別に特徴をみていきます。

 

<プルサール>

14世紀後半の文献にも記されている古いブドウ品種で、香りが高く、ジュラのスペシャリティとして知られています。

栽培上では、発芽も成熟も早いのが特徴です。デリケイトで、春の霜のリスクあり、クリュールや日焼けの恐れもあります。粘土や粘土石灰質土壌に適し、房は小さいけれど粒は大きい。

香り高い質の高いワインにはなりますが、力強いわけではなく、色も薄い。トルソーやピノ・ノワールにブレンドされたり、あるいは色が淡いのでロゼとして売られたりすることもあるようです。ジュラでは2番目に多く栽培されている赤用品種で、アルヴォワでも栽培されています。

 

ドメーヌ・グラン プルサール 2012」2,400円(本体価格)

明るいオレンジがかったルビー色。ザクロ、ラズベリー、アセロラ、クランベリーなど、果皮を伴う、酸のあるフレッシュな果皮を伴う赤い果実、ほんのりとしたスパイス香などが、ふわりと広がり出ます。

繊細でしなやかな味わい。バランスよく、しっとりとした上品な食感で、フレッシュな酸が心地よく、シルキー。タンニンもとても細やかで溶け込んでいます。後味にも、ザクロやラズベリーなどの、甘酸っぱいフレッシュな果実の余韻が残ります。

セニエしたロゼのような印象なので、ロゼ的に少し冷やしめで飲むのがよさそうです。春から夏にかけて、ロゼ感覚でランチやディナーに最適です!

生ハム、レバーペースト、サラミといった前菜類や、フレッシュなチェリートマトと魚介のパスタ、白身魚やサーモンのフライ、鶏肉のサラダ仕立てなどに合いそうです。

 

<トルソー>

ボトルにはJURAの印字が。

ボトルにはJURAの印字が。

力強く、長期熟成可能な赤ワインに仕上がる品種です。

18世紀前半に文献に記されているブドウ品種で、ジュラ地方だけでなく他地域でも栽培されています。例えば、ポルトガルではバスタルトと呼ばれるなど、ポルトガル、スペインなどで、少なくとも2世紀以上に亘って栽培され続けていて、各地で呼び名が違います。

 

DNAとしてはシュナン・ブラン、ソーヴィニヨンと兄弟関係にあり、ジュラの白品種サヴァニャンとも関連があります。

栽培上では樹勢が強く、発芽も成熟も早く、完熟には日当りがよい場所が好みます。小さくてコンパクトな房で、小粒から中位の粒で、果皮が厚く、糖度は高くなります。

赤3種類は、ラベルの下方に品種名が記されています。

赤3種類は、ラベルの下方に品種名が記されています。

ジュラ地方の重要品種ではありますが、栽培面積はわずか5%しかありません。それは、他の品種より日照量が必要で、温かい砂利質や泥土を好むからです。収穫量次第ではありますが、色の淡いプルサールとは対極で、色が濃く、力強くストラクチャーのある赤に仕上がります。

 

ドメーヌ・グラン トルソー 2013」2,500円(本体価格)

明るいルビー色。エキス分を感じる、熟した赤い果実、シナモン系のスパイス、ラズベリーのリキュール、ブラックチェリーなどの香りが広がります。

なめらかなアタックで、全体にまろやかでソフトなタッチ。酸はフレッシュながら果実味に包み込まれ、タンニンは細やかで味わいを引き締める程度です。骨格がしっかりとしていて、程よい肉付きで、ふわりとチェリータルトのような後味が残ります。

ハムやサラミなどの豚肉加工品やミートソースパスタ、仔牛肉や豚肉のカツレツ、茸料理、シンプルな赤身肉料理にもよく合いそうです。

 

 

<ピノ・ノワール>

ピノ・ノワールについては、ここで言うまでもありませんね。ブルゴーニュで栽培が盛んですが、地図を見るとジュラ地方はブルゴーニュの東90キロほどにあり、結構近い産地です。

 

ドメーヌ・グラン ピノ・ノワール 2012」2,400円(本体価格)

フレッシュで生き生きとした香りです。ラズベリーやチェリー、ロースト香やスパイス、ほんのりなめし革も感じられるハリのある香りです。なめらかなアタックで、酸ほどよく、全体にまろやかでソフトな食感で、タンニンも味わいを引き締める程度。

しっとりとした落ち着きのあるピノ・ノワールで、濃すぎず軽すぎず、癒し系のピノ・ノワール、という印象。

クリーミーな鶏肉料理、豚肉や軽い赤身肉料理、和食の鴨料理とも合いそうです。

 

<ジュラ地方の料理と/モリーユ茸のクリームソース>

モリーユ=網笠茸は、笠の部分が網状なので、独特の食感が楽しめます。戻し汁を加えて更に煮詰め、パスタにからめても美味しくいただけます。

モリーユ=網笠茸は、笠の部分が網状なので、独特の食感が楽しめます。戻し汁を加えて更に煮詰め、パスタにからめても美味しくいただけます。

ジュラ地方では、春が旬のモリーユ茸(網笠茸)をよく食べるようです。秋口のセップ(ポルチーニ)と同じように人気のある茸で、香りだけでなく、独特の食感があるのも特徴です。バターソテーやクリームソース仕立てで食べるのがジュラ地方の定番です。

 

そろそろ旬が始まるので日本にもフレッシュなモリーユが入ってくる頃ですが、残念ながら探せませんでしたので、ドライのモリーユを使ってみました。バターや生クリームを使ってのクリームソースは、作っている最中からとても魅力的な香りがしてきます。ドライなセップにも少し似ている風味です。

 

生モリーユが見つからなかったのが幸か不幸か、乾燥モリーユの凝縮感が、赤ワインととてもよい相性でした。バターやクリームの濃厚さとモリーユの滋味豊かな味わいが、上品な赤ワインと馴染み合いました。

ただ、プルサールだけは、前回の白編でご紹介した「コッコー・ヴァン・ジョーヌ」との相性のほうがよいと感じました。やはりプルサールは、赤というよりロゼワインとしてみるほうがよいようです。

 

料理をわざわざ準備する時間のない場合には、ハム類や熟成したコンテ・チーズをつまみながら、ゆったり味わうのもよいですね。休日のブランチなど、癒しのジュラを是非登場させてみてください。

(tex t & photo by Yasuko Nagoshi)

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