ワイン&造り手の話

<ニュイ・サン・ジョルジュ村の特徴とは>

— ニュイ・サン・ジョルジュは、コート・ド・ニュイの一番南にあるメジャーなアペラシオンですね。前回のジュヴレ・シャンベルタンが北部ですから、いくつかの村を飛ばしてニュイ・サン・ジョルジュまでやってきました。さて、どんな特徴があるでしょうか。

柳 今まで、どんな印象を持ってます?

— あら、私がですか? そうですね〜。申し訳ないですが、ちょっと地味めなイメージでしょうか。

柳 特級畑がないからね。

— 確かに。花形がいないと映えない、というのはあるかもしれないですね。

柳 でも、実は「レ・サン・ジョルジュ」を特級にしようか? という話はあったんですよ。でもAOCの制定時、ニュイ・サン・ジョルジュ村の村長がアンリ・グージュで、レ・サン・ジョルジュの大地主だったもんだから「おらっちの畑を特級にしろ、というのもなあ〜」と、躊躇してしまったんですよ。というのも「じゃあ、どうしてすぐ上のヴォークランはだめなんだ? と問われると困る」ということで、結局「うちの村には特級はいらない」ということになってしまったらしい。

— もったいない話ですね〜。後悔してないんでしょうか?

柳 いや、それでね、今動きがあるんですよ。若手の造り手たちが、やっぱりレ・サン・ジョルジュを特級にしようとがんばってます。

— 若手、って何歳ぐらいの人たちですか?

柳 30代半ばから40ぐらいですかね。ティボー・リジエ・ベレールが旗振り役で、フェヴレのエルワンもその仲間のひとり。

— あ、フェヴレの息子さん?

柳 そう。あと、アンリ・グージュの孫のグレゴリー・グージュ。この3名が中心になっていますね

— どういう手続きが必要なんですか?

柳 地質調査などの書類が必要だと、5年前に言ってましたね。たぶん20年ぐらいかかるかも、とも。

— じゃあ、みんなおじさんになっちゃいますね。

地図全体像

柳 そういえばね、ニュイ・サン・ジョルジュのイメージは、垢抜けないジュヴレ・シャンベルタンかな、と思っているんですよ。

— そのココロは?

柳 基本的には男性的な力強さがありながら、洗練されていない感じ。シャンボール・ミュジニーやヴォーヌ・ロマネはどちらかといえば女性的じゃないですか。

— なるほど。その2つの村は確かに上品であったり、優しいイメージですからね。

柳 じつは、ニュイ・サン・ジョルジュはとても広くて、ひと言でいい表せないんですよ。

— 広いということは、造り手の数も多いから、品質にもムラがある?

柳 そういう見方もできますね。まず地図を見てみてください。北から南まで長い上に、間に谷間がありますよね。北のヴォーヌ・ロマネ側の3分の1は、その谷の北側。谷から南の斜面が3分の2ほどあります。

ー ということは、ニュイ・サン・ジョルジュはおよそ3つの区域に分けられると。

柳 そうです。そして南の3分の1は、実は別の村なんですよ。プレモー・プリセ村。でも、本当は「プルモー・プリセ」という発音が正しい。80年代に道路工事をした人が、村の看板にアクサンをつけてしまって、皆がプレモーと呼ぶようになってしまったんですって。

— ちょっと書いてみてもらえます?

柳 本当は Premeaux-Prissey 新しい看板が Prémeaux-Prissey

— ふむ。まあどちらにしても私はフランス語のRの発音はできませんけれどね……。

柳 まあまあ。それで、プルモー・プリセで造られるワインは、村名クラスはコート・ド・ニュイ・ヴィラージュになり、1級はニュイ・サン・ジョルジュの1級になる。

— どうしてですか?

柳 プルモー・プリセは村としてマイナーだし、発音もしにくいから、ラベルに「プルモー・プリセ」と書いても販売しにくいだろう、と。だから、お隣にあるニュイ・サン・ジョルジュのご威光にあやかりましょう、ということなんじゃないかな。

1級と村名の違いは、斜度が緩やかだと村名。中腹が1級。標高が高すぎると村名。

— 高すぎるとぶどうが熟しにくいですからね。そういえば、ニュイ・サン・ジョルジュの特徴ですが、男っぽいけれど垢抜けない感じ、ということでよいですか?

柳 昔はね。

— じゃあ、今は変わってきていると思っていいでしょうか?

柳 もちろんです。この3本を飲めばわかりますよ。

ー すみません。長いので「つづき」にします。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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