バルバレスコ・マンティコ2010 by Bersano × 和食の世界
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ネッビオーロというブドウ品種は、本当に不思議です。なぜかというと、偉大な赤ワインを造るブドウ品種に数えられ、とても寿命が長いワインを生むにも関わらず、色が薄いからです。偉大な赤! と思うと、きっと色が濃いにちがいない、と想像する方が多いようなのですが、そうとは限りません。ネッビオーロに濃い色を期待してグラスに注ぐと、拍子抜けするかもしれません。
<バルバレスコ・マンティコの個性>
ネッビオーロの故郷、北イタリアはピエモンテ州の老舗として知られるベルサーノの「バルバレスコ・マンティコ」という単一畑のバルバレスコも、やっぱり色は薄いのです。ちょっと頼りなさそうなオレンジがかった明るい色合い。それに、ここは極伝統的な造り方をしているから、香りにも派手さがありません。加えて、まだまだ若くて控えめな感じ。
もちろん、モダンな造りをしているのである程度の色の濃さもあり、華やかな香りがして味わいが濃くて、というネッビオーロのワインもあります。そういう銘柄は、ワインのコンテストで賞を取ったり、評論家から高い点数をもらいます。だって、たくさんワインがある中で、華やかに目立つのですから。地味な服を着てお化粧もそこそこの女性陣の中で、キラッと光る格好でメイクもバッチリしたスタイル抜群の女性がいたら、そちらに目を惹かれるのは当然ですよね。
ベルサーノの「バルバレスコ・マンティコ」は、そういう意味では地味でほっそりとした女性です。でも、話しかけると、とても気遣いのある人だとわかります。はじめはシャイであまり自分を主張せず、ゆっくりと話し出し、次第にお互い気が合うとわかると、相手を立てながら自分の魅力も自然に伝えてくれるような、そんな感じでしょうか。だんだん開き始めて、じっくり、しかも気負いなく付き合っていける、味わい深いワインです。
あまり美味しく楽しい時間を過ごしたので、時間が経つのを忘れてしまいそう。そろそろ終わりにしなければ、と思い立ち、2人で飲んで食べた分の支払いをしようと思ったら、あれ? 予想したより値が張らない。
ベルサーノというワイナリーは、ピエモンテの家族経営の会社の中で最も多くの自社畑を持っています。合計で230ヘクタールもあるのです。その中には、本拠地のアスティだけではなく、バローロも、このバルバレスコの畑も入っています。今は、バローロもバルバレスコも、それぞれの地区内に醸造所をもっていなければ造ることができないという法律があります。でも、ベルサーノは長い歴史があるので、醸造所はアスティにあるのですがバローロもバルバレスコも造ることができます。こういう例外はピエモンテで3社しか存在していません。このワイナリーは、派手さはないのですが、ピエモンテという土地にしっかり根ざしているということは、このことからもわかります。
<和食と!>
さて、「バルバレスコ・マンティコ」を料理と合わせてみたいと思います。
はじめは控えめに感じますが、時間をおくと次第に香りが開いてきて、複雑性が出てきます。上品で少しドライなブラックチェリーやクランベリーの香りに、丁字などのスパイス、なめし革も。味わいは、しなやかなアタックで酸フレッシュながら強くはなく、バランスよく、スムーズ、タンニンはとても細やかで静かにじわりじわりと出てくる感じ。セラー温度で飲み始めて、大きめのグラスでゆっくりと楽しみたいワインです。
赤ワインなので、当然赤身の肉類にも合わせられますが、それではつまらないので和食系で攻めてみたいと思います。
まずは牡蠣フライ。牡蠣の旨みが増幅して、牡蠣もワインも甘くふっくらとした後味になり、幸せなマリアージュです。
お次は鶏肉の串揚げ焼きタレソース。一度揚げてからタレをつけて焼いていますから、普通の焼き鳥タレより味がしっかりついているイメージです。こちらもタレの味とマッチします。甘じょっぱい味わいに、上品な果実味と酸とタンニンが加わって、新しいバランスのよい味わいを生み出すような感覚です。
他にも、ブリの照焼きやサーモン照焼き、それに舞茸やしめじなどの茸を添えても美味しそうです。豚肉のソテーに山椒をふりかけて。焼き鳥屋さんのレバーのタレ焼き。こんなものと合わせると美味しいのではないかと思います。
しっかりした味つけの温かい和食に幅広く合いそうなので、是非試してみてください!
参考:ベルサーノのホームページ
ベルサーノについての記事 ←まだお読みでなければ、是非! バルベーラ・ダスティと料理のマッチングの記事
(text & photo by Yasuko Nagoshi)
カテゴリー | 赤ワイン | |
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ワイン名 | バルバレスコ・マンティコ Barbaresco Mantico | |
生産者名 | ベルサーノ Bersano | |
生産年 | 2010 | |
産地 | イタリア/ピエモンテ | |
主要ブドウ品種 | ネッビオーロ | |
希望小売価格 | オープン価格(参考想定売価6,610円) | |
輸入元/販売店 | メルシャン |
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